「老後資金を自分でも準備したい」「新NISAをきっかけに投資を始めたい」と考え、資産運用に興味を持つ人は増えている。
ただし、資産運用は何となく始めるものではない。まず生活費や緊急時の資金を確保し、そのうえで目的・運用期間・リスク許容度に合った方法を選ぶことが大切だ。
初心者は、値上がりしそうな銘柄を当てにいくよりも、NISAなどの制度を活用しながら「長期・分散・積立」を基本にするのが取り組みやすい。
本記事では、資産運用が必要とされる背景、初心者におすすめの投資戦略、投資先、ポートフォリオの作り方、注意点を順番に解説する。
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資産運用が初心者にもおすすめされる理由
資産運用が注目される背景には、物価上昇、老後資金への不安、長寿化などがある。
もちろん、すべての資金を投資に回す必要はない。しかし、預貯金だけで将来の支出に備える場合、物価上昇によりお金の実質的な価値が目減りする可能性がある。
まずは資産運用がなぜ必要とされているのかを理解し、自分に合う範囲で始めるかどうかを判断しよう。
資産運用の必要性
資産運用を検討すべき主な理由は、以下の3つだ。
- インフレでお金の実質的な価値が下がる可能性がある
- 年金・退職金だけでは老後資金が不足する場合がある
- 長寿化により、老後資金が必要な期間が長くなっている
インフレで預貯金の実質価値が下がる可能性がある
インフレとは、モノやサービスの価格が上がる状態のことだ。物価が上がると、同じ金額で買えるものが少なくなるため、現金や預貯金の実質的な価値は下がる。
たとえば、以前は1万円で買えたものが1万1,000円になった場合、手元の1万円の数字は変わらなくても、買える量は減っている。
総務省統計局の消費者物価指数によると、2025年平均の全国総合指数は前年比3.2%上昇している。預金金利だけでこの物価上昇に追いつけない場合、資産全体の購買力は低下しやすい。

インフレに備える方法のひとつが、株式や投資信託など、値上がりや収益の分配が期待できる資産を長期的に保有することだ。
ただし、投資には元本割れのリスクがある。預貯金と投資を目的別に分け、生活に必要なお金まで投資に回さないことが前提となる。
年金・退職金だけに頼る老後設計は不確実性がある
老後資金を考えるうえでは、公的年金や退職金の金額を確認することも重要だ。
厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金保険(第1号)の老齢年金受給者の平均年金月額は151,142円だった。
また、令和5年就労条件総合調査では、勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者における大学・大学院卒(管理・事務・技術職)の1人平均退職給付額は1,896万円となっている。
ただし、年金額や退職金は加入期間、働き方、企業規模、退職給付制度の有無などで大きく異なる。平均額だけを前提に老後設計を立てると、自分の実態とズレる可能性がある。
将来の収入を公的年金や退職金だけに頼るのではなく、早い段階から自分でも資産を準備しておくことが、老後の選択肢を増やすことにつながる。
長寿化で老後資金が必要な期間が長くなっている
老後資金の準備で見落としやすいのが、資産を取り崩す期間の長さだ。
厚生労働省の「令和6年簡易生命表」によると、平均寿命は男性81.09歳、女性87.13歳となっている。65歳で退職した場合でも、20年以上の老後期間を想定する人は少なくない。

長生きは喜ばしいことだが、生活費、医療費、介護費、住宅修繕費などが長期間続く可能性もある。
資産運用は、老後までに資産を増やすだけでなく、老後に資産を長持ちさせるための手段としても役立つ。
資産運用のメリット
資産運用には、主に以下のメリットがある。
- 将来必要な資金を効率的に準備しやすい
- 配当金・利息・分配金などの資産所得を得られる場合がある
- 経済や金融への理解が深まりやすい
将来必要な資金を効率的に準備しやすい
資産運用の大きなメリットは、預貯金だけで積み立てるよりも、将来必要な資金を効率的に準備できる可能性があることだ。

たとえば20年後に2,000万円を準備したい場合、運用しないなら単純計算で毎年100万円を積み立てる必要がある。
一方、年5%で運用できた場合は、毎年約60万円の積立で2,000万円を目指せる計算になる。年3%の場合でも、毎年約75万円の積立で同じ目標に近づける。
もちろん、実際の運用利回りは毎年一定ではなく、マイナスになる年もある。だからこそ、短期で結果を求めず、長期の資金計画として取り組むことが重要だ。
資産所得を得られる場合がある
株式の配当金、債券の利息、REITや投資信託の分配金など、保有している資産から収入を得られる場合がある。
こうした収入は、給与以外の収入源を作る手段のひとつになる。ただし、配当金や分配金は企業業績や運用状況によって減額・停止される可能性があるため、確実な収入とは考えない方がよい。
資産所得を目的にする場合も、利回りの高さだけで選ばず、投資対象、価格変動、手数料、減配リスクを確認することが大切だ。
経済や金融への理解が深まりやすい
資産運用を始めると、物価、金利、為替、企業業績、税制など、自分の資産に影響する情報を自然と確認するようになる。
経済や金融の知識は、投資判断だけでなく、住宅ローン、保険、年金、家計管理にも役立つ。
ただし、SNSや短期的な相場ニュースに振り回されると、不要な売買につながる場合がある。初心者は、制度や商品の基本を学びながら、無理のない範囲で運用を続けることを意識しよう。
資産運用を後押しする国の制度
日本には、個人の資産形成を後押しする制度としてNISAとiDeCoがある。どちらも税制優遇を受けられるが、目的や使い方は異なる。
- NISA:投資で得た利益を非課税にできる制度
- iDeCo:老後資金を自分で準備する私的年金制度
NISA(少額投資非課税制度)
NISAは、少額からの投資を支援する非課税制度だ。通常、上場株式や投資信託などの売却益・配当等には20.315%の税金がかかるが、NISA口座で得た一定範囲の利益は非課税になる。

2024年からの新しいNISAでは、つみたて投資枠と成長投資枠を併用できる。年間投資枠はつみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円の合計360万円で、生涯非課税保有限度額は1,800万円だ。
初心者は、長期・分散・積立に適した投資信託を選びやすいつみたて投資枠から始めると、投資の仕組みに慣れやすい。
成長投資枠では上場株式やETF、REITなども対象になるが、商品選びの自由度が高い分、リスク管理も必要になる。最初から枠を使い切る必要はなく、無理のない積立額で始めることが大切だ。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCoは、自分で掛金を拠出し、自分で商品を選んで運用する私的年金制度だ。掛金と運用益の合計をもとに、原則60歳以降に老齢給付金として受け取る。
iDeCoには、主に以下の税制優遇がある。
- 掛金が全額所得控除になる
- 運用益が非課税で再投資される
- 受け取り時に退職所得控除または公的年金等控除の対象になる
たとえば毎月1万円を拠出し、所得税率10%・住民税率10%と仮定すると、年間の所得税・住民税の負担軽減額は概算で24,000円になる。
ただし、iDeCoは原則として60歳まで資金を引き出せない。教育資金や住宅購入資金など、途中で使う可能性があるお金には向かないため、老後資金専用として活用するのが基本だ。
初心者におすすめの投資戦略とは
資産運用を始める際は、最初に投資戦略を決めておくことが大切だ。戦略がないまま商品を選ぶと、相場の上げ下げやSNSの情報に振り回されやすくなる。
初心者がまず押さえたい基本は、長期・分散・積立の3つである。
長期・分散・積立が基本
長期・分散・積立は、投資リスクを抑えながら資産形成を続けるための基本的な考え方だ。

長期投資
長期投資とは、数年から数十年の時間をかけて運用する方法だ。短期的な値動きで利益を狙うのではなく、経済成長や企業収益の拡大を長い目で取り込むことを目指す。
長期投資のメリットは、短期的な価格変動に振り回されにくくなることと、運用益を再投資することで複利効果を得やすいことだ。
ただし、長期投資でも必ず利益が出るわけではない。投資対象を分散し、無理のない金額で続けることが前提になる。
分散投資
分散投資とは、投資先をひとつに集中させず、複数の資産や地域に分けて投資することだ。
株式だけ、特定の国だけ、特定の企業だけに資金を集中させると、その投資先が下落したときに資産全体への影響が大きくなる。
国内外の株式、債券、REITなど、値動きの特徴が異なる資産を組み合わせることで、資産全体の値動きをならしやすくなる。
積立投資
積立投資とは、毎月など決まったタイミングで一定額を投資する方法だ。
価格が高いときには少なく、価格が安いときには多く買うことになり、購入単価を平準化しやすい。投資タイミングを一度に集中させないため、高値づかみのリスクを抑える効果も期待できる。
また、証券会社で積立設定をしておけば、自動的に買付が行われる。忙しい人でも続けやすく、初心者に向いている投資方法だ。
自分に合ったポートフォリオを作成する
資産運用では、どの商品を買うかだけでなく、どの資産にどれくらい配分するかが重要だ。
ポートフォリオとは、保有する金融商品の組み合わせのことを指す。たとえば、投資信託、個別株、債券、REITなどをどの比率で持つかを考える。

大きなリターンを狙いたい人は株式の比率を高める選択肢がある。一方、値動きを抑えたい人は債券や預貯金の比率を高める方が安心しやすい。
自分の年齢、収入、家族構成、運用目的、損失に対する不安の大きさを踏まえ、無理なく続けられるポートフォリオを作ることが大切だ。
ポートフォリオとアセットアロケーションの違い
アセットアロケーションは、株式・債券・不動産などの資産クラスをどの比率で持つかという大枠の配分を指す。
たとえば「株式50%・債券40%・REIT10%」という配分がアセットアロケーションだ。
一方、ポートフォリオは、その配分に基づいて実際に保有する具体的な商品の組み合わせを指す。
先にアセットアロケーションを決め、その後に投資信託や株式、債券などの具体的な商品を選ぶと、方針がぶれにくくなる。
NISAやiDeCoなど有利な制度を活用する
資産運用では、同じ商品に投資する場合でも、どの制度を使うかによって税負担が変わる。
初心者は、まずNISAを活用した積立投資を検討し、老後資金をより計画的に準備したい場合にiDeCoを併用する流れが分かりやすい。
NISAの活用法
NISAには、長期・積立・分散投資に使いやすいつみたて投資枠と、上場株式やETF、REITなども購入できる成長投資枠がある。
投資経験が少ない人は、つみたて投資枠で低コストのインデックスファンドを積み立てる方法から始めると、商品選びや運用管理の負担を抑えやすい。
成長投資枠は、個別株やETF、REITにも投資できるため自由度が高い。ただし、商品ごとのリスク差も大きいため、慣れてから活用範囲を広げるとよい。

iDeCoの活用法
iDeCoは、老後資金を準備する目的に向いている制度だ。掛金が全額所得控除になるため、所得税・住民税の負担軽減につながる。
一方で、原則60歳まで資金を引き出せない。教育資金、住宅購入資金、近い将来使う可能性のある資金をiDeCoに入れすぎると、必要なときに使えなくなる可能性がある。
iDeCoを利用する場合は、老後まで使わない金額に絞って掛金を設定し、NISAや預貯金と役割を分けて活用しよう。
NISA・iDeCoの併用
NISAとiDeCoは併用できる。使い分けの目安は、資金を使う時期だ。
老後より前に使う可能性がある教育資金、住宅資金、まとまったライフイベント資金は、引き出しやすいNISAや預貯金で準備する方が向いている。
一方、老後まで使わない資金はiDeCoも選択肢になる。税制優遇は魅力だが、引き出し制限を理解したうえで利用しよう。
初心者におすすめの投資先4選
初心者が資産運用を始める際は、仕組みが分かりやすく、少額から始めやすい投資先を選ぶことが大切だ。
代表的な投資先は以下の4つである。
| 投資先 | 初心者向きの使い方 | 主な注意点 |
|---|---|---|
| 投資信託 | 少額から分散投資しやすい | 元本保証ではなく、手数料差がある |
| 株式 | 企業の成長や配当を狙える | 個別企業の業績に左右されやすい |
| REIT | 少額で不動産に投資しやすい | 不動産市況や金利、災害の影響を受ける |
| 債券 | 比較的安定した利息収入を狙える | 信用リスクや金利変動リスクがある |
投資信託(ファンド)
投資信託とは、投資家から集めた資金をまとめ、運用会社が株式や債券などに投資する金融商品だ。
1つの商品で複数の銘柄に投資できるため、少額から分散投資を始めやすい。初心者がNISAで積立投資を始める際にも、投資信託は有力な選択肢になる。
投資信託には、市場指数との連動を目指すインデックスファンドと、市場平均を上回る成果を目指すアクティブファンドがある。
初心者は、まず低コストで分散しやすいインデックスファンドから検討するとよい。ただし、インデックスファンドでも投資対象が株式であれば価格は大きく変動するため、元本保証ではない点は理解しておこう。

投資信託をおすすめする理由
投資信託を初心者におすすめしやすい理由は、以下の3つだ。
- 自分で個別銘柄を選ぶ手間を減らせる
- 1商品で分散投資しやすい
- 証券会社によっては少額から積立できる
個別株を複数選んで管理するには、企業分析や売買判断が必要になる。投資信託なら、商品を選んだ後はファンドの運用方針に沿って分散投資できるため、初心者でも続けやすい。
また、ネット証券を中心に100円単位で積立できるサービスもあり、まとまった資金がなくても始めやすい。
投資信託の注意点
投資信託で運用する際は、以下の点に注意したい。
- 商品ごとに手数料が異なる
- 元本保証ではない
- 短期間で大きな利益を狙う商品ではない
投資信託には、購入時手数料、信託報酬、信託財産留保額などのコストがかかる場合がある。特に信託報酬は保有中に継続して差し引かれるため、長期投資では差が大きくなりやすい。
また、投資信託は預金ではない。価格が下落すれば元本割れする可能性があるため、投資対象やリスク水準を確認したうえで選ぼう。
株式投資
株式投資とは、企業が発行する株式を購入し、株価の値上がり益や配当金、株主優待などを狙う投資方法だ。
企業の成長を直接取り込める一方、業績悪化や市場環境の変化によって株価が大きく下落する可能性もある。
初心者が個別株に投資する場合は、いきなり資産の大半を1銘柄に集中させるのではなく、少額から始める、複数銘柄に分ける、投資信託と組み合わせるなどの工夫が必要だ。

株式投資をおすすめする理由
株式投資の魅力は、企業の成長に応じて大きなリターンを得られる可能性があることだ。
- 値上がり益を狙える
- 配当金を受け取れる銘柄がある
- 株主優待を受けられる銘柄がある
安定して利益を出している企業や、今後の成長が期待される企業に投資できれば、株価上昇や配当金によって資産を増やせる可能性がある。
また、日本株の一部には株主優待を提供する企業もある。自社商品やサービス券などを受け取れる場合があり、投資を続ける楽しみのひとつになる。
株式投資の注意点
株式投資では、以下のリスクを理解しておこう。
- 株価の変動が大きい
- 配当金や株主優待は継続されるとは限らない
- 流動性が低い銘柄は売りたい価格で売れない場合がある
株式は、企業業績、金利、為替、景気、投資家心理などによって価格が変動する。短期間で大きく上がることもあれば、大きく下がることもある。
配当金や株主優待を目的に投資する場合も、企業の方針変更や業績悪化により減配・廃止される可能性がある。
初心者は、個別株だけに偏らず、投資信託や債券などと組み合わせてリスクを分散しよう。
REIT(不動産投資信託)
REITとは、投資家から集めた資金で不動産に投資し、賃料収入や売却益を分配する金融商品だ。
J-REITは証券取引所に上場しており、株式と同じように市場で売買できる。現物不動産を購入するよりも少額で始めやすく、管理の手間がかからない点が特徴だ。
一方で、市場価格は日々変動する。金利上昇、不動産市況の悪化、空室増加、災害などによって価格や分配金が下がる可能性もある。
REITをおすすめする理由
REITをポートフォリオに組み込むメリットは、以下の3つだ。
- 少額から不動産に投資しやすい
- 分配金を受け取れる可能性がある
- 現物不動産の管理が不要
J-REITは、一定の要件を満たして利益の90%超を分配することで、法人税が実質的に課税されない仕組みがある。そのため、収益を投資家へ分配しやすい構造になっている。
ただし、分配金は保証されていない。不動産収入の減少や金利上昇により、分配金が下がる場合もある。
REITの注意点
REITに投資する際は、以下の点に注意しよう。
- 不動産市況や金利の影響を受ける
- 災害や空室増加で収益が下がる可能性がある
- 投資法人の信用リスクがある
REITは不動産に投資する商品だが、価格は市場で決まるため、株式のように値動きする局面もある。
また、特定の用途や地域に偏ったREITは、オフィス市況、ホテル需要、災害などの影響を受けやすい。初心者は、複数用途・複数地域に分散されたREITやREIT型投資信託を検討するとリスクを抑えやすい。
債券
債券とは、国や地方公共団体、企業などが資金を借り入れるために発行する有価証券だ。投資家は債券を購入し、満期までの間に利子を受け取り、満期時に額面金額の償還を受ける仕組みである。
債券は株式に比べて値動きが比較的安定しやすいが、発行体の信用力や金利動向によって価格は変動する。
初心者が安全性を重視するなら、個人向け国債が選択肢になる。個人向け国債は国が発行し、満期時の元本割れがなく、1万円から購入できる。
債券をおすすめする理由
債券をポートフォリオに組み込むメリットは、以下の3つだ。
- 株式より値動きが安定しやすい
- 利子収入の見通しを立てやすい
- 株式と組み合わせることでリスク分散に役立つ
株式中心のポートフォリオは、相場下落時に資産全体が大きく減る可能性がある。債券を組み込むことで、値動きのクッションとして機能する場合がある。
ただし、外国債券は為替変動の影響を受け、社債は発行企業の信用リスクを伴う。安全性を重視する場合は、債券の種類を確認して選ぶことが重要だ。
債券の注意点
債券で運用する際は、以下の点に注意しよう。
- 大きなリターンは狙いにくい
- 発行体の信用リスクがある
- 金利上昇時に債券価格が下がることがある
一般に、市場金利が上がると既存債券の価格は下がりやすく、市場金利が下がると既存債券の価格は上がりやすい。
また、利回りが高い債券ほど、信用リスクや為替リスクなどが大きい場合がある。利回りだけで判断せず、発行体、格付け、通貨、満期までの期間を確認しよう。
初心者におすすめのポートフォリオの作り方
ポートフォリオは、感覚で作るのではなく、目的とリスク許容度から逆算して作ることが大切だ。
初心者がポートフォリオを作成する流れは以下の通りである。
- 投資目標を設定する
- リスク許容度を確認する
- 資産配分(アセットアロケーション)を決める
- 投資商品を選ぶ
- ポートフォリオを構築する
- 定期的に見直し、必要に応じてリバランスする
投資目標を設定する
最初に、何のために資産運用をするのかを明確にしよう。
目的が曖昧なまま投資を始めると、どれくらいのリスクを取るべきか、毎月いくら積み立てるべきかを判断しにくい。
投資目標の例は以下の通りだ。
- 子どもの大学進学までに500万円を準備したい
- 20年後の老後に向けて2,000万円を準備したい
- 5年後に住宅購入の頭金300万円を用意したい
- 退職金を運用しながら計画的に取り崩したい
「いつまでに」「いくら必要か」が分かると、必要な積立額や目標利回りを計算しやすくなる。
ただし、5年以内に使う予定の資金は、価格変動の大きい投資商品に回しすぎない方がよい。使う時期が近い資金ほど、預貯金や個人向け国債など安定性の高い方法を優先しよう。
リスク許容度を確認する
リスク許容度とは、投資で損失が出たときにどの程度まで受け入れられるかという度合いのことだ。
同じ100万円の損失でも、資産額や年齢、収入、家族構成によって感じ方は異なる。投資を続けられなくなるほど不安を感じるなら、リスクを取りすぎている可能性がある。

リスク許容度は、以下の要素をもとに判断しよう。
| 年齢 | 運用期間が長いほど、短期的な損失を回復する時間を取りやすい。 |
|---|---|
| 資産状況 | 生活防衛資金や余裕資金が多いほど、投資の損失に対応しやすい。 |
| 収入の安定性 | 収入が安定しているほど、積立を継続しやすい。 |
| 投資経験 | 値動きに慣れているほど、相場下落時も冷静に判断しやすい。 |
| 性格 | 損失への不安が大きい人は、無理にリスクを高めない方が続けやすい。 |
リスク許容度は一度決めたら終わりではない。結婚、出産、住宅購入、退職などで変化するため、定期的に見直そう。
資産配分(アセットアロケーション)を決める
投資目標とリスク許容度が分かったら、次に資産配分を決める。
代表的な資産クラスの特徴は以下の通りだ。
| 株式 | 値動きは大きいが、長期的な成長を期待しやすい。 |
|---|---|
| 債券 | 株式より値動きが安定しやすく、利子収入を見込みやすい。 |
| REIT | 少額で不動産に投資できるが、不動産市況や金利の影響を受ける。 |
| 金 | 株式や債券と異なる値動きをする場合があり、分散先として使われることがある。 |
| 預貯金 | 元本を確保しやすく、生活防衛資金や近い将来使う資金に向いている。 |
積極的にリターンを狙うなら株式の比率を高め、安定性を重視するなら債券や預貯金の比率を高めるのが基本だ。
外国株式や外国債券は、投資先の価格変動に加えて為替変動の影響も受ける。円高・円安によって円換算の損益が変わる点も理解しておこう。
投資商品を選ぶ
資産配分が決まったら、各資産クラスに対応する商品を選ぶ。
初心者は、いきなり個別株や個別債券を多く選ぶよりも、投資信託やETFを使って分散する方が管理しやすい。
商品を選ぶときは、以下の項目を確認しよう。
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 投資対象 | 国内株式、外国株式、債券、REITなど何に投資する商品か。 |
| 手数料 | 購入時手数料、信託報酬、売却時コストが高すぎないか。 |
| リスク | 価格変動、為替、信用リスクなどを理解できるか。 |
| 純資産総額 | 極端に小さく、繰上償還リスクが高くないか。 |
| NISA対象 | NISAで買いたい場合、対象商品かどうか。 |
投資信託を選ぶ際は、交付目論見書や月次レポートで運用方針、手数料、過去の値動き、投資対象を確認することが大切だ。
特定の商品名だけで判断せず、自分の資産配分に合っているかを基準に選ぼう。
ポートフォリオを構築する
資産配分と商品が決まったら、実際に買付を行ってポートフォリオを構築する。
たとえば「外国株式50%・国内債券30%・REIT10%・預貯金10%」と決めたなら、その比率に近づくように商品を購入する。
最初から理想の比率にぴったり合わせる必要はない。毎月の積立で少しずつ近づける方法でも問題ない。
大切なのは、商品を買った後も「なぜその商品を持っているのか」を説明できる状態にしておくことだ。理由が分からない商品は、相場が下がったときに不安になりやすい。
定期的な見直しとリバランス
ポートフォリオは、作って終わりではない。金融商品の価格は日々変動するため、時間が経つと当初の資産配分からズレていく。
たとえば、最初は「株式50%・債券50%」で始めても、株式が大きく上昇すると「株式70%・債券30%」のように比率が変わることがある。
株式比率が高くなりすぎると、当初想定していたよりもリスクが大きくなる。そこで、増えすぎた資産を一部売却したり、不足している資産を追加購入したりして、配分を整える作業がリバランスだ。

見直しは頻繁に行いすぎる必要はない。半年に1回、年に1回、または資産配分が一定以上ズレたときなど、自分なりの基準を決めておこう。
【目的別】おすすめの分散投資ポートフォリオ
ここでは、初心者が参考にしやすい分散投資ポートフォリオを目的別に紹介する。
ただし、以下はあくまで一例だ。実際の配分は、年齢、収入、家族構成、投資期間、リスク許容度によって調整しよう。
安全型のポートフォリオ
値動きを抑えながら運用したい人は、債券や預貯金の比率を高める安全型のポートフォリオが選択肢になる。
- 国内債券:40%
- 外国債券:20%
- 国内株式:15%
- 外国株式:15%
- 預貯金・個人向け国債:10%
安全型では、値動きが比較的安定しやすい債券を中心にしつつ、株式も一部組み入れて成長性を取り込む。

短期的な値動きが不安な人や、投資経験が少ない人は、まず安全型に近い配分から始めると続けやすい。
ただし、リスクを抑えるほど期待リターンも低くなりやすい。長期で大きく資産を増やしたい場合は、運用期間に応じて株式比率を少しずつ検討しよう。
バランス型のポートフォリオ
リスクとリターンのバランスを重視する人は、国内外の株式・債券を均等に持つ方法が分かりやすい。
- 国内債券:25%
- 外国債券:25%
- 国内株式:25%
- 外国株式:25%
この配分は、日本の公的年金を運用するGPIFの基本ポートフォリオと同じ4資産25%ずつの構成である。
株式と債券、国内と外国をバランスよく組み合わせることで、特定の資産や地域に偏りすぎない運用を目指せる。
初心者が自分で配分を考えるのが難しい場合、バランス型投資信託を使う方法もある。ただし、商品によって手数料や資産配分が異なるため、目論見書で中身を確認しよう。
積極型のポートフォリオ
運用期間が長く、ある程度の値動きを受け入れられる人は、株式比率を高めた積極型のポートフォリオも選択肢になる。
- 外国株式:50%
- 国内株式:25%
- 外国債券:15%
- REIT:10%
積極型では、株式の比率を高めることで長期的な成長を狙う。一方で、相場下落時には資産全体が大きく減る可能性もある。

投資経験が少ないうちは、積極型でもインデックスファンドを中心にすると管理しやすい。アクティブファンドを組み入れる場合は、信託報酬、運用方針、過去の成績、下落時の値動きを確認しよう。
高いリターンを目指すほど、損失が出る可能性も高まる。積極型を選ぶ場合でも、生活防衛資金や近い将来使う資金は別に確保しておくことが前提だ。
初心者は気をつけたい!資産運用の注意点
資産運用を始める前に、初心者が特に気をつけたい点は以下の3つだ。
- 余剰資金の範囲内で行う
- 過剰なリスクを避ける
- 相場やSNSに左右されすぎない
余剰資金の範囲内で行う
資産運用は、生活に必要なお金を確保したうえで行うことが大前提だ。
生活費、家賃、住宅ローン、教育費、医療費、近い将来使う予定の資金まで投資に回すと、相場下落時に生活が苦しくなる可能性がある。

まずは、万が一の失業や病気、急な出費に備える生活防衛資金を確保しよう。
生活防衛資金の目安は、会社員なら生活費の6か月分程度、自営業や収入が不安定な人は1年分程度を考えると安心しやすい。毎月の生活費が20万円なら、120万円〜240万円程度を預貯金などで確保するイメージだ。
そのうえで、当面使う予定のない余剰資金を投資に回すようにしよう。
過剰なリスクを避ける
投資におけるリスクとは、価格の振れ幅のことだ。リスクが大きい商品は、大きな利益を狙える一方で、大きな損失が出る可能性もある。
初心者が短期間で大きく増やそうとして、個別株、レバレッジ商品、値動きの激しいテーマ型商品などに資金を集中させると、想定以上の損失につながることがある。
まずは長期・分散・積立を基本にし、自分が耐えられる値動きの範囲で運用することが大切だ。
相場が下がったときに不安で眠れない、すぐ売りたくなるという場合は、株式比率や投資額が大きすぎる可能性がある。資産配分を見直し、続けられるリスク水準に調整しよう。
相場やSNSに左右されすぎない
投資を続けていると、相場が大きく上がる局面も下がる局面もある。ニュースやSNSで不安をあおる情報を目にすることもあるだろう。
しかし、短期的な情報に反応して売買を繰り返すと、手数料や税金の負担が増えたり、回復局面を逃したりする可能性がある。

相場が大きく動いたときは、まず自分の投資目的、運用期間、資産配分を確認しよう。
長期の資産形成を目的にしているなら、一時的な下落だけで投資方針を変える必要はない場合が多い。反対に、生活資金まで投資していたり、リスクを取りすぎていたりする場合は、資産配分を見直すきっかけになる。
相場予想よりも、自分のルールを守ることを重視しよう。
資産運用は必要に応じてプロへの相談も検討する
資産運用は自分で始めることもできるが、家計、保険、住宅ローン、相続、老後資金などが絡む場合は、専門家に相談するのも選択肢だ。
ただし、相談先によって得意分野、報酬体系、提案できる商品が異なる。自分の目的に合った相談先を選ぶことが重要である。
資産運用を専門家に相談するメリット
専門家に相談するメリットは、主に以下の3つだ。
- 制度や商品の基本を整理しやすい
- 家計やライフプランに合った考え方を相談できる
- 相場下落時の不安を相談しやすい
特に初心者は、NISAやiDeCo、投資信託、保険、年金などの情報を自分だけで整理するのが難しい場合がある。
専門家に相談すれば、自分の資産状況や目的を踏まえたうえで、どの制度を使うべきか、どの程度のリスクを取るべきかを考えやすくなる。
ただし、専門家の提案が必ず正解とは限らない。提案内容、手数料、リスク、報酬体系を確認し、納得したうえで判断しよう。
相談先の選択肢
資産運用の相談先には、主に以下の選択肢がある。
- 証券会社
- FP(ファイナンシャルプランナー)
- IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)
証券会社
証券会社では、株式や投資信託、債券などの商品について相談できる。店舗を持つ総合証券では、担当者から対面や電話で説明を受けられる場合がある。
一方、証券会社は自社で取り扱う商品を販売する立場でもある。提案された商品が自分の目的やリスク許容度に合っているか、手数料は高すぎないかを確認しよう。
FP(ファイナンシャルプランナー)
FPは、家計、保険、住宅ローン、税金、年金、相続、資産形成など、お金に関する幅広い相談に対応する専門家だ。
資産運用だけでなく、家計全体やライフプランを整理したい人に向いている。
ただし、FP資格だけで個別の金融商品について投資助言や売買の仲介ができるわけではない。具体的な商品提案を受けたい場合は、金融商品仲介業や投資助言・代理業など、必要な登録の有無を確認しよう。
IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)
IFAは、特定の金融機関に所属せず、金融商品仲介業者として証券会社などと提携しながら資産運用の提案を行うアドバイザーだ。
証券会社の担当者と異なり、転勤や異動で担当が変わりにくいケースがあるため、長期的に相談しやすい点が特徴とされる。
ただし、IFAも提携先の証券会社や報酬体系によって提案できる商品が変わる。相談する際は、登録状況、報酬の仕組み、取り扱い商品、利益相反の有無を確認しよう。
資産運用を誰かに相談する場合でも、最終的に投資判断をするのは自分自身だ。分からない点を質問し、納得できない商品は無理に購入しない姿勢が大切である。
おすすめの資産運用の戦略を活用しよう
資産運用は、将来のお金の不安を減らすための手段のひとつだ。
インフレ、老後資金、長寿化などを考えると、預貯金だけでなく、投資信託、株式、債券、REITなどを目的に応じて活用することが重要になる。
初心者は、まず生活防衛資金を確保し、余剰資金の範囲内でNISAを使った長期・分散・積立から始めると取り組みやすい。
そのうえで、老後資金をより計画的に準備したい場合はiDeCoの活用も検討しよう。
ポートフォリオを作る際は、投資目標、リスク許容度、資産配分、商品選び、リバランスの順に考えると、判断がぶれにくくなる。
自分だけで判断するのが難しい場合は、証券会社、FP、IFAなどの専門家に相談する方法もある。相談先を選ぶ際は、登録状況や報酬体系、提案商品のリスクを確認しよう。

おすすめの資産運用に関するよくある質問
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出典
金融庁「NISAを知る」
金融庁「資産形成の基本」
厚生労働省「iDeCoの概要」
国税庁「No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度」
総務省統計局「2025年平均 消費者物価指数(全国)」(公開日:2026年1月23日)
厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
厚生労働省「令和6年簡易生命表の概況」(公開日:2025年7月25日)
厚生労働省「令和5年就労条件総合調査の概況」
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)「基本ポートフォリオの考え方」
投資信託協会「J-REIT(不動産投資信託)とは」
財務省「個人向け国債」
関東財務局「投資助言・代理業」
厚生労働省 職業情報提供サイト job tag「IFA」

